漫画の主人公とミズノが契約 野球用具を独占提供

最近、朝日新聞で読んだこの記事の事がずっと気になっている。
サブリミナルという言葉がある。気がつかないところに入っている情報をサブリミナル情報という。識下情報とよく訳される。サブリミナル広告というのは、これを広告に使った場合だ。別にサブリミナルが悪いというわけではない。一時、TBSのニュース番組で麻原の顔がサブリミナル映像で入っていたことが問題になったが、あれは、報道だから問題になったのだ。報道の場合は、表の主張と裏の主張が異なるのが問題で、オウムを批判する報道番組の中で、麻原の顔が画面一杯にアップで映っていたから問題だったのだ。アメリカあたりだったら、放送免許一発取り消し級の大失態だった。ドラマなどでは、怖い効果の演出などに恐ろしげな画像を1フレーム(1/30秒)とかハーフフレーム(1/60秒)とかに挿入するのは、良くあることだったので、そんなノリで現場の制作者が入れてしまったのだろう。とはいうものの、業界では大問題となり、結局放送業界の自主規制で、現在では、普通のドラマにさえ、1フレームサブリミナル映像は入れられていない。私自身は、別にドラマやバラエティの演出にサブリミナル映像を使うのは何の問題もないとは思うが。

 ところで、サブリミナルな情報呈示は、別に動画に1フレーム挿入する方法だけではない。要するに気がつかないところに入っている情報は全てサブリミナル情報となる。視覚情報でいえば、視線外のところは大体サブリミナルだ。例えば、人間は顔を見ると、自然と視線が相手の目に行く。だから、あごのあたりに何か書き込んでおけばサブリミナル情報となる。ニュースキャスターの顔をアップで写して、画面の下に何かテロップを入れれば、それはサブリミナル情報といえる。Tシャツの胸に書いてある言葉は、面と向かっている相手にはサブリミナル情報である。進化の過程で、女性の乳房が丁度、目を見て話しているときのサブリミナルの限界ぐらいのところにあるのは、種の保存の知恵だろう。

ハリウッド映画などでは、主人公の使う携帯電話に何気なく、AT&Tとか、映画のストーリーの中で映っているテレビのブランドにSONYなどと入れられているのを良くみる。あれらは全てサブリミナル広告である。音楽でいえば、可聴領域ぎりぎりの高い周波数に入れる方法もある。また、大きい音が鳴っている時は小さい音が聞きづらい(マスキング効果という)のを利用してぎりぎり聞けないぐらいの小さい音をいれるというサブリミナル技法はよく使われている。高度なものでは、音響スペクトル中に挿入する方法もある。勿論、意識的には聞こえないのが重要で、意識に上がると批判的な意識処理にさらされ効果が一気に下がる。逆に小さすぎると今度は、サブリミナルな情報が伝達されない。その調整がプロの技だ。私自身も独自に発明したサブリミナル技術を利用した音源を使った着うたをドコモとAUの携帯電話向けに提供している。女性の胸が大きくなるとか、彼氏/彼女ができるとかの効果を狙った音源である。サブリミナル音源と、特殊な脳に影響を与える脳機能音源の両方が組み合わされて入っている。(ITMediaの『奇跡の着うた』の取材記事はネットでかなり話題だったらしい。カメラマンがわざとズレたカツラっぽく写真を加工したあれである。もちろん、私ははげてはいないので悪しからず。ただ、近々髪の毛が生える着うたを提供する予定なので、その話題を取材の時に出したので、わざとあんな写真にしたのだろうと推測している。)http://www.tomabechi.com/kiseki.htmlに着うたの利用者からのメールがいくつか出ているが、効果は実験室でのデータ通りだ。

 ところで、サブリミナル情報呈示は、子供には特に影響が強い。1997年にテレビアニメの「ポケモン」を見て、沢山の子供が倒れる事件があった。当時、「光過敏性のてんかん」と分析する医師が多かったが、私は、そうではなく、気分が悪くなる方向にサブリミナル誘導されたものと見ていた。当時の私の文章が、http://www.tomabechi.com/cognitive/pokemon.html
にある。文章は、あまり正確に定義されていなかったサブリミナルという用語を敢えて避けて、それを示唆するような書き方をしていたが、まさに広義のサブリミナルな情報呈示で子供達の気分が悪くなったのだと考えていた。一般に、子供は被暗示性が特に高く、また、識下情報と意識化された情報の境界がゆるやかなせいもあると思うが、サブリミナルな情報呈示によく反応する。だから、サブリミナル広告は特に良く効くはずである。今回朝日新聞に掲載されていたマンガの一コマでは、主人公が構えたバットにミズノのMのロゴが広告として入っている。マンガのストーリーに熱中している子供達には、完全にサブリミナルな情報呈示になる。これは良く効くはずだ。今後、あらゆるマンガに、何気なく広告が挿入されるようになっていくだろう。こういう事態は、いずれ来るだろうとは予想していたが、本当に来た。勿論、これそのものにはなんの問題もない。野球中継で、画面のはじっこに、球場のフェンスに書かれた企業名がちらっと映っているのと同様だ。ここで、言いたいのは、この手の広告はすごく効きますよ、特に子供達には、ということ。それだけだ。ついに子供までもが、巨大広告マーケットにいれられたかという感想だ。

因みに、サブリミナルについては、下條信輔氏の『サブリミナル・マインド』がお勧めだ。サブリミナル広告は、有名な「映画を見ながらポップコーンとコカコーラ」の時代から、一般向けには「サブリミナルはあまり効かないよ」という言い方を学者はしてきたが、「実のところは、かなり良く効くのですよ」というのが、もうひとつ今日言いたかったことだ。「催眠で人は殺せないよ」と、私たち学者が、社会に対するいい意味での「ウソ」をずっとついてきたのと同様。勿論、やりようによっては、催眠で殺人者をしたてることも可能だ。ある意味催眠技術にも類する洗脳技術を使って、殺人(未遂)狙撃犯が作り上げられたことが日本国内で実際にあったことについては、砂防会館での記者会見などで再三にわたって警鐘を促してきているとおりだ。