最近の笹井氏の件で代表されるテレビ、新聞の自殺報道が、あからさまなWHO(国連の専門機関である、世界保健機関、World Health Organization)の勧告違反である事を木曜レギュラーのMXテレビ、「バラ色ダンディ」で話した。その後、問い合わせが来ているので、WHOが、2000年に勧告を出し、2007年に改訂、再度新版の勧告を2008年に「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」として勧告を出したメディア報道がしてはいけない事を以下に列挙する。

これ以外にも、「メディア担当者自身が影響を受けることを注意せよ」とか「自殺支援場所の情報を提供せよ」、「著名人の報道には特に注意せよ」といった、「するべきこと」も勧告されているが、ここでは、「してはいけないこと」のみを列挙する。日本の新聞、テレビ、あらゆるメディアが違反していることが明確だ。勧告は、当時の総務省や、当時の大学教授らが翻訳したものがあるが、ここでは、その後の経緯から、現在、アメリカのメディアで現行解釈されているものを列挙したので、当時の勧告文の直訳とは少し異なる。

少なくとも、BPO (放送倫理・番組向上機構)も問題にせねばならないし、総務省も行政指導を行うべきだが、テレビ、ラジオなどの放送メディアだけはでなく、新聞や雑誌まで含まれる事柄なので、本来は国会で問題にすべきだ。

以下、WHOの自殺報道に関する「してはいけない」勧告

一面などのトップニュースにしない
自殺という言葉を見出しに使わない
自殺をセンセーショナルに報道しない
写真や遺書を公表しない
具体的な場所を報道しない
具体的な方法を報道しない
自殺に単純な理由を付与しない
時間の制約がたとえあっても、即興的なコメントは避けなければならない
責任の所在を割り付けしない
自殺が問題解決の方法であると示唆する報道をしない
自殺報道を何度もしない
精神科病歴について言及しない
遺族、関係者に不適切な(二次自殺を誘引するような)取材をしない


以下、
WHO現行勧告全文

http://whqlibdoc.who.int/publications/2008/9789241597074_eng.pdf?ua=1


WHO現行勧告 自殺予防全般

http://www.who.int/mental_health/resources/preventingsuicide/en/


このように自殺報道を特に注意しなければいけないのは、MXテレビでも解説したが、新聞見出しであったり、テレビでテロップ付きなどで何度も流されると、読者、視聴者の無意識に深く刷り込まれるからだ。刷り込まれた情報が、自殺が苦しみから逃れる方法である事を示唆していたり、逆に自殺が社会的に大きなインパクトがあると示唆されていたり、具体的な自殺の場所や方法であったりすると、強い精神的なショックであったり、薬物影響下であったりして、意識的な思考活動が鈍り、無意識が優位な状態であると、無意識のダイナミズムで、自殺が誘発される確率が大きく上がるからだ。実際、自殺を防ぐために強めの向精神薬を処方された患者が、逆に自殺してしまうことがあるのは、こういうメカニズムが働くためであり、医師のミスではなく、メディアに殺されたと言っても過言ではない。

WHO勧告が例に上げているウィーンの例では、センセーショナルな自殺報道をやめた結果、地下鉄自殺の75%、自殺全般の20%が減少したという数字が報告されている。長期的にはもっと大きなインパクトがあるだろう。

最近のテレビメディアにおける自殺報道のセンセーショナルな扱われ方をみると、若年層の活字離れから言えば、日本の若年層の自殺はテレビメディアが引き起こしているといっても、これも過言ではなかろう。