P2Pファイル交換ソフトWinny(ウィニー)の作者金子勇被告に対する有罪判決が出た。私自身は、P2Pを誰よりも早く推奨してきた立場から、かつて、ファィルローグ裁判の時には、東京地裁に意見書まで出し、「日本のP2Pの健全な発展を妨げるべきではない」といい続けてきた。当然、P2Pの発展は日本の未来にとって極めて重要であると思っているし、技術開発も続けてきた。最近もプレスリリースしているぐらいだ。 また、金子君は私も創設時に関わった当時通産省の「未踏」天才プログラマープロジェクトの開発者のひとりだ。私の会社CRLにも「未踏」天才プログラマーがいて総務省予算の著作権を守るP2Pプロジェクトの担当だったのに対して、金子君がWinnyを出していたのは、ずっと皮肉な話だと思っていた。

今回の裁判に対しては、私は裁判所、司法に同情的である。P2Pを進めるためには、いかに権利侵害を防ぐかということに一番力を注がなければならないのに、金子君の言動には、その逆のニュアンスが強すぎる。また、Winnyには、著作権侵害・情報漏洩を助長するバグが見つかっており、また利用されているにも関わらず、検察との関係等々の言い訳からそのバグを修正してこなかったことも、同様なニュアンスで取れる。 今回の判決は、ソフトウェアの開発者が有罪となるという全世界的にも稀な判例になったわけで、我々ソフトウェア開発者には極めて厳しい判決だ。このことは、我々、先輩プログラマー、日々プログラミングで生きているプログラマー、そして未来に生まれてくるプログラマー、すべてに重大な影響を与えるこのような判決を裁判所から引き出してしまった金子君の責任であることは間違いない。その意味でも金子君には深く反省してもらいたい。

ちなみに、一般には、P2Pは、権利侵害を助長する技術という印象が強くなってしまったが、実際には、P2Pは、クライアント(つまりPC)に、ソフトウェアを常時稼動させ、ファィアーウォールの内側から24時間常時TCPコネクションなどを張れるという技術であるから、PC単位でファィアーウォールの内側から、権利侵害を止めることも原理的には可能であり、また、犯罪者をWeb方式より本来は遥かに楽に特定することができる技術である。つまりP2Pは、本来は著作権等の権利をより守りやすい技術であるのだ。ただ、中継サーバの匿名化などをわざわざ実装して、あえて権利侵害をしやすくしているP2Pソフトが蔓延していることが、まるでP2P技術が権利侵害を助長しているかのような誤った印象を与えているのである。こういった誤った印象を社会に広めることに役割を果たしてしまったということでも、金子君には大いに反省してほしい。